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凛々奮闘記9
「……凛? どうし」
「……隆司」
「……っ」
何やら変な様子にたかちゃんは不思議そうな顔をする。それを遮って、呼んでみる。
途端、心臓の鼓動がさらに早まる。
「……シたい……」
言うことは決めたはずなのに、結局それしか出てこなかった。
たかちゃんを懇願するように見つめてみる。
たかちゃんの喉仏が、ゆっくり上下した。
「……り、ん……それって……」
「……ん、そういう、意味……」
「……いいのか?」
あまりに恥ずかしくて、たかちゃんの胸に埋まる。
トクトクとはやい鼓動が聞こえてきた。それに、たかちゃんの声が、少し強張っている。
それで、わかった。
たかちゃんはおれに負担をかけるからって、ずっと遠慮してくれていたんだろう。決しておれに興奮しないわけではなかった。
「いい、じゃなくて……おれが、望んでる」
「凛……」
たかちゃんの胸の中から腕だけ出して、ベッドの下を探る。そして目当てのものを見つけた。
「用意は……してある……」
「これ、お前……買ったのかよ」
「うん……」
たかちゃんに差し出したローションとゴム。お互い初々しく、見ただけで照れてしまう。
買うときも恥ずかしかったけど、ちゃんと用意をしておかなければならないって、ネットに書いてあった。そもそもネットで調べるのも恥ずかしかった。
「……じゃあ、ベッドに……」
「ん……」
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