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夏だ!どこへ行く!?1
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七月に入って、気温は徐々に上がり始めた頃。じわじわと汗が出る季節になってきた。
暑くて極力騒ぎたくはないけれど、相変わらず姫野くんと仁くんは教室に遊びに来る。ほぼ毎日。その執念には頭が下がる。
「蓮くん!暑くなってきたね!」
「だったら離れろ」
姫野くんは清水くんの腕に抱きついて、押し返されているし。
「亜樹せんぱ、」
「近寄るな」
「わ〜怖いですね〜」
僕の方へ来ようとした仁くんは、颯太に止められているし。
変わらない日々だ。
ただ一つ不満を述べるとすれば、颯太が僕の近くにいて、守ってくれればいいのに、ということ。僕から離れるのは少し、不満。
心、狭いかな。
一番いい形は、仁くんとも仲良くできることだと思うけれど、颯太を独り占めしたい自分もいる。
「渡来……」
「轟くん?」
僕がポツンと一人でいたら、珍しく轟くんが話しかけてくる。凛くんは傍にいない。
視線を巡らせてみると、自分の席に座っているのが見えた。ますます珍しい。
「ちょっといいか?」
声量が控えめで、あまり聞かれたくないらしい。僕はちらっと颯太に視線を向けて、まだ喧嘩中だということを把握する。
「うん。平気」
それから念のため教室の隅まで行った。
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