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夏だ!どこへ行く!?5
安心した様子の凛くんに手を振って、僕は自分の席に戻る。
颯太や清水くんたちの様子を眺めていた轟くんは、僕が戻ってくるなり寄ってきた。
「どうだった?」
「大丈夫だよ」
「……え? 何が?」
僕が口角を上げてそう言うと、轟くんはキョトンとする。
こういう状況は何と言うのだろうか。高みの見物、とは違う。ただ全て分かった上で、当事者に全部は告げない。そういう見守る立場は初めてだから、少し楽しい。
こんなこと思ったら、轟くんや凛くんに失礼だけれど。
「特に心配はしなくていいと思う」
「いや、その中身を知りたいんだけど……」
「えっと、それは……」
あまり喋らない方がいい。なら何といえばよいか。
眉間にしわを寄せた瞬間。
「おーい!!!」
バーンッと教室の扉を開けて、松村くんが姿を現した。
何やら企んでいるみたいだ。視線はもちろん集まっている僕たちの方へ向けられている。
松村くんは一直線にこちらへ向かってきた。
「お! 小室も来い!」
「えっ、なになに〜」
途中で自分の席に座ったままの凛くんが狩られた。
松村くんは笑みを顔いっぱいに広げ、凛くんを引きずりながらこちらへやってきた。
「プール行こうぜ!!」
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