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夏だ!どこへ行く!?7
「姫野もついでに行こうぜ!」
「松村に言われるのはなんかイヤ〜! でも蓮くん行くから行くよ!」
松村くんの軽い誘いに、姫野くんは明るく答えた。
またもやその場の皆、いや、松村くんと姫野くん以外が、キョトンとする。
「……茂、知り合いだったのか?」
「あれ? 言ってなかったか?」
「全く!」
清水くんの怒声に松村くんはハハハッて笑う。
先ほどの姫野くんの口調からして、松村くんは彼氏候補ではないみたいだ。それなのに知り合いとはなぜだろう。
姫野くんは狙った男性としか関わりを持たなそうだけれど……。
姫野くんを見る。
いつものような勝気な視線だ。先の恐怖はきっと僕の勘違いだったのだろう。
「……一年の時に同じクラスだったんだ! んで、面白そうなやつ〜と思って話しかけた! そっからずっと仲良いんだよな!」
「は!? 仲良くない! ボクはずっとうざいとしか思ってない!」
「それも愛情の裏返し!」
「違う!」
松村くんの笑顔を姫野くんはキッと睨みながら言い返す。
そのやり取りから十分仲良さげに見えてしまうことまでは、考えが及ばないのだろうか。
その時、ふと颯太の視線を感じて隣を見上げる。心配そうな瞳が見えた。このままだと姫野くんも一緒に行くことになるからだろう。
もう害はないし、平気だと小さく頷いた。
颯太は安心したように微笑む。
「おい、茂……」
「蓮、いいよな! オレはみんなで行きたいぜ!」
「……わかったよ」
姫野くんに抱きつかれたままの清水くんが、険しい顔で松村くんに言う。だが輝かしい笑顔を見て、渋々頷いていた。
そこでチャイムが鳴る。
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