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瞬刻の想い1

放課後に僕と颯太は駅前にやってきていた。平日だからか制服姿の人たちがたくさん歩いていた。 いつ来ても思うけれど本当に人が多い。颯太とのデートでもう何回も来たから、だいぶ慣れたと思うけれど。 ただ微妙に颯太に近づいてしまう。慣れても緊張するものは緊張する。 「水着は今シーズンだし……どこでも売ってそうだけど……」 「いいお店、ある……?」 颯太が周りを見回しつつ歩いていく。僕は颯太に任せるしかないので、颯太についていく。 「メンズも充実してそうなのはあそこかな〜」 颯太はいくつかのビルで悩んだあと、僕を連れてそのうちの一つに入った。 間抜けにも僕は中でぐるりと首を回す。ここは服屋が集まっているビルみたいだ。 どこのビルもそのような感じが多いけど、入っているのは主に女性向けの店ばかりだ。だから普通は男は肩身が狭い。 「ここはレディースに混じって結構メンズもあるんだよ」 「そうみたい、だね」 颯太の言う通り華やかなスカートやトップスが並ぶ店の隣に、黒や白でまとめられたかっこいい雰囲気の店がある。 それに店内は夏模様で、水着を売り出している店もあった。きっとメンズ水着もあるはずだ。 「亜樹の水着をしっかり選ばないと……」 「颯太のもちゃんと選ぶよ」 「あーじゃあいっそのことお揃いにしちゃう?」 颯太が深刻な顔をして言ったから僕も返す。するとにやにやしながら顔を覗き込まれた。 お揃い。想像してみる。 ……嬉しい、かな。颯太と一緒は何でも嬉しい。 「嬉しい……」 「ほんと?」 「うん」 「俺も嬉しいけど、流石にダメかぁ」 「うん……それは思った……」 僕も颯太も公共の場で堂々とお揃いにするほど能無しではない。 颯太は僕の気持ちを察して、男同士を気にする必要はないと示す行動をしてくれたことはある。ただ今回は二人して自ら飛び込むわけだ。それは流石にしない。 「あっ、あそこ入ってみよう」 「うん、そうだね」 二人で苦笑しあったあと、颯太が店を見つけた。

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