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瞬刻の想い2

颯太が見つけたお店は完全にメンズのみのところだった。しかも水着ばかり売っている。 メンズだからシンプルな色合いや模様のものかと思っていたが、蛍光色やフラミンゴ柄のように派手なのもたくさんあった。種類が豊富すぎて目移りしてしまう。 「すごい、すごいね、颯太」 「いっぱいあるね」 「まず颯太の選ぼうよ」 「え? うん、わかった」 どれも颯太に似合いそうで僕は興奮してしまう。早く早くと颯太の腕を引けば、颯太はついてきてくれた。 とりあえず近くのラックを見ていく。 「亜樹が選んでくれるの?」 「あっ……ごめん。自分で選びたいよね……」 颯太が笑顔で僕に言った。僕は水着に伸びていた手を引っ込める。 つい自分が選びたいと思ってしまったけれど、自分のものは自分で選ぶものだ。 「ううん。亜樹が選んでくれたのを着たいな」 「ほんとに?」 「ほんともほんと」 「ありがとう」 へにゃりと破顔する。颯太は優しく頭を撫でてくれた。 それならばとまた水着に腕を伸ばす。 颯太なら何でも似合う。だから派手でもシンプルでもいい。だが色からしたら一番似合うのは黒や青といった大人しめの色。大人っぽい色だ。 ただ少し、悪戯心が働く。 「これは?」 「んー?」 颯太に蛍光色とフラミンゴ柄、二種類の水着を見せる。顔の笑みは隠しきれなかった。 それを颯太のズボンの上に重ねて見てみる。 「すごい派手だね」 「でも似合うよ〜」 確かに颯太はどちらも似合ってしまった。フラミンゴ柄なんて特に普通の人なら笑われてしまいそうなのに、完全にふざける路線に向かっているのに、とても似合う。 本当にこの二つから選んでしまおうかと思ってしまいそうだ。 「亜樹ー」 「あははっ、ごめん」 当然颯太にはバレて、ジト目で見られてしまった。

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