653 / 961
瞬刻の想い5
僕の顔を見て颯太はケラケラ笑う。僕の頬はますます膨らんでいく。
それを見て颯太は僕の頬をつついた。
「亜樹が可愛すぎるからいけない」
「可愛くないもん」
「嬉しいくせに」
「早く選んで」
「はいはーい」
颯太はご機嫌なまま次々水着を見ていく。素早く出して僕に当て、見てから戻し、また次を出して当て、戻す。
僕はその早い動きをただ見ていた。
「やっぱこれだな」
そして最終的に残ったのは、淡いレモンイエローの水着だった。
蛍光色でないから派手ではない。派手なのは目立ちそうで苦手だからよかった。そもそも颯太はそのことをわかっているだろうし。
パーカーは薄い水色で、チャックの部分が同じレモンイエローだった。
「どう?」
「すごく好き」
「よかった」
「ありがとう、颯太」
「うん。じゃあレジ行こうか」
颯太たから水着を貰ってほくほくした気分で頷く。颯太が先にレジに向かう。
もちろん僕も続こうとしたのだけど、ふと颯太が水着を見ていたラックに視線がいった。それは少し乱れていたからで、きちんと直しておく。
それから颯太に続こうとしたけれど。
「……!?」
不可能だった。
誰かに腕を引かれ、店の暗がりに連れ込まれる。びっくりした僕は声を出すことすらできなかった。
ともだちにシェアしよう!