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瞬刻の想い5

僕の顔を見て颯太はケラケラ笑う。僕の頬はますます膨らんでいく。 それを見て颯太は僕の頬をつついた。 「亜樹が可愛すぎるからいけない」 「可愛くないもん」 「嬉しいくせに」 「早く選んで」 「はいはーい」 颯太はご機嫌なまま次々水着を見ていく。素早く出して僕に当て、見てから戻し、また次を出して当て、戻す。 僕はその早い動きをただ見ていた。 「やっぱこれだな」 そして最終的に残ったのは、淡いレモンイエローの水着だった。 蛍光色でないから派手ではない。派手なのは目立ちそうで苦手だからよかった。そもそも颯太はそのことをわかっているだろうし。 パーカーは薄い水色で、チャックの部分が同じレモンイエローだった。 「どう?」 「すごく好き」 「よかった」 「ありがとう、颯太」 「うん。じゃあレジ行こうか」 颯太たから水着を貰ってほくほくした気分で頷く。颯太が先にレジに向かう。 もちろん僕も続こうとしたのだけど、ふと颯太が水着を見ていたラックに視線がいった。それは少し乱れていたからで、きちんと直しておく。 それから颯太に続こうとしたけれど。 「……!?」 不可能だった。 誰かに腕を引かれ、店の暗がりに連れ込まれる。びっくりした僕は声を出すことすらできなかった。

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