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対極2
「仁くん」
仁くんの手が僕に触れる前に、颯太が僕を背に隠した。
「また後輩くんかぁ」
「はい。亜樹先輩の素肌をよく見たいのでどいてもらえますか?」
「ダメに決まってるでしょ」
仁くんは驚くほどに整った笑顔。対する颯太は眉間にシワを寄せた険しい顔。
また今日もバチバチと火花が散る。
「じゃあこうしません? 競争して勝った方が亜樹先輩と一緒に行動できる」
「亜樹と一緒にいていいのは俺だけだけど?」
僕は颯太の背に手を置いて、影から二人の様子を見つめる。
周りのみんなも颯太と仁くんのやりとりを見ている。清水くんが呆れ顔で仁くんに一歩近づこうとした。
「じゃあ不戦勝で俺が亜樹先輩を貰いますね」
だがその前に仁くんが言葉を吐き出す。
犬みたいに可愛かった仁くんの面影はやはりどこにもない。とてもふてぶてしてしい。心の片隅で感心してしまいそうだ。
「あーもう、めんどくさいなぁ。わかったよ」
清水くんが何か言いだす前に颯太が返事をしてしまった。深く溜め息を吐いている。
「じゃあこっち行きましょう」
「はいはい。亜樹、待っててね。絶対負けないから」
「あ……颯太」
颯太は僕の頭を撫でて笑顔で去っていった。
おそらく泳ぐ練習をする人向けのプールに向かったのだと思う。五十メートルとかあるプールだろうか。
追いかければいい。そうすれば、颯太と一緒にいれる。
でも颯太への少しの不満と、自分への嫌悪がそれを許さない。
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