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対極3
颯太と仁くんは輪から出ていってしまったけど、他のみんなは一緒に遊ぶだろうか。
そう思って凛くんを見てみる。
話しかけようと思っていたら、何やら緊張した顔つきで轟くんに話しかけていた。そしてそのまま二人でどこかへ行ってしまう。
多分、あのことを伝えるのだろう。それなら邪魔をしてはいけない。
「渡来……」
「あ、清水く……」
「れーんくん!!」
清水くんが心配そうに僕に声をかけてくれた。しかしそれに返す前に、姫野くんが清水くんの腕に抱きつく。
清水くんは淡いピンク色のパーカーと水着だ。女の子と間違われてもおかしくなさそう。
「ちょ、やめろ」
「あっち行こう! 二人きりになろ!」
「おい、やめろって……!」
第三者の目線が多くあることもあってか、清水くんはずるずると姫野くんに引きずられていく。
もしかしたら見かけによらず、姫野くんの腕の力は強いのかもしれない。
されるがままの清水くんを見て、そうも思った。
これでこの場に残るのは二人だけ。
松村くんの方を見ると、綺麗に視線が絡む。
「……っ」
視線が合った途端、松村くんがにやりと笑うからビクッと体を揺らしてしまった。
何だろう。松村くんは何を企んでいるのだろう。
ドキドキしていると、松村くんは僕にビーチボールを見せてきた。自信ありげな表情と共に。
「渡来、行くぜ」
そしていつもより低い声で僕に言ってきた。
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