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揺れる4
「ぼくもお姉ちゃんとお兄ちゃんとお友達になりたい」
「ふふっ。もうお友達だよ」
「ほんと?」
「ああ。もう友達」
武くんは姫野を見て、それから俺を見る。首を左右に動かして忙しそうだ。
キラキラ輝く瞳が可愛らしい。
自然と仁や杏が小さい頃を思い出す。二人とも可愛かったものだ。今や杏はませているし、仁は渡来を困らせ、間宮に突っかかってばかりだ。仁に至っては、可愛らしさはもう微塵もない。
一人で辟易としていると、武くんがさらに笑顔になる。
「ありがとう! 嬉しい!」
「ボクも嬉しいよ」
「ママに自慢するー」
武くんは楽しそうに頭を揺らしている。その顔いっぱいに笑顔が広がる。
「今日はお母さんと二人で来たの?」
「うん。ほんとはね、パパも一緒のはずだったんだけど、お仕事なんだって」
「そっかぁ……」
「でもママがせっかくだから二人で行こうねって」
「優しいお母さんだな」
「うん!」
武くんの頭をわしゃわしゃと撫でる。それにくすぐったそうにしながら、また武くんは笑う。
そしてふと顔を上げると、一人の女性が視界に入った。何かを探すようにキョロキョロと辺りを見ている。
「あっ、ママだ!」
武くんがすっくと立ち上がる。そしてパタパタと走り出した。また転ばないといいが。
俺と姫野は武くんに遅れてついていく。
「武……!」
「ママ、あのね、お友達ができた!」
「お、お友達?」
武くんはお母さんに抱きついたあと、すぐにその場でぴょんぴょん跳ね始める。
お母さんは困惑したように武くんを見つめた。しかし武くんがこちらを指差したことで、俺たちの存在に気づく。
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