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揺れる6

「お前、意外と面倒見いいんだな」 「え〜普通だよ〜」 物珍しそうに俺が姫野を見れば、いつも通り整った笑顔を向けてくる。 「でも周りの大人は動く気配なかっただろ」 「ん〜……そうだね。でもさ」 姫野が俺に向けていた体を前方に向ける。細くて白い脚が、一歩前に踏み出された。 「小さい子は周りの大人が助けるべきなんだよ。それが、当たり前」 「姫野……」 顔を見ようと並ぼうとしたら、それより前に姫野がくるっと振り向く。その顔には可愛らしい笑顔が浮かんでいる。 純粋に嫌な予感がする。 「そんなことよりれーんくん!」 「うわっ、やめろって!」 案の定、姫野はまた腕に抱きついてきやがった。 「ボク、女の子に見えるみたいだね〜? だからこうしても平気かなっ?」 「それは小さい子だったからだろ! 普通にわかるわ!」 「え〜! 蓮くんけち〜!」 すっかり元通りになってしまった姫野。 俺はその腕を無理やり剥がした。 頬を膨らませて俺を睨む姫野の表情は、普通に可愛らしいものだ。こうやって何でもかんでも作っているのだろう。 「けちとかじゃねーの。行くぞ」 「どこに?」 「茂たち探す」 「えー! 二人きりは!?」 「もう疲れた」 そう言えばまた姫野は大声で文句を言い出す。それを当然無視して俺は歩き出した。 そんな俺に大人しく姫野はついてきた。

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