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揺れる8
「迎え行くぞ」
「まあ全員揃ってた方がビーチバレー盛り上がるか!」
「だからビーチじゃないって」
清水くんの言葉。
松村くんの明るい声。
姫野くんのツッコミ。
ぐさ、ぐさ、ぐさ、と刺さる。
僕を思いやって言ってくれたこと。
それは、わかっている。
だから今から、颯太の元へ行く。
「……いいよ」
「渡来?」
「颯太もたまには他の人と遊びたいだろうし、僕たちは僕たちで遊んでよ?」
歩き出そうとしていた三人を思わず止めてしまう。
「……可愛くないやつ」
「姫野っ」
姫野くんが清水くんに一瞬視線をやってから、僕を睨みつけてきた。その口から放たれた言葉は、一番深く突き刺さる。
清水くんはたしなめるけれど、確かにその通りだ。可愛くないやつ。
くだらない嫉妬で清水くんの気遣いを無下にして、その場の空気も悪くして。
そもそもこんな小さなことで嫉妬することもみっともない。
好きで好きでたまらなくて、独占したくなってしまう。そんな権利、僕は持っていないはずなのに。
「あんた、蓮くんが……」
「いいんだよ、そんなの」
「蓮くんはこいつに甘すぎー!」
「だって好きだから」
ぬけぬけと言う清水くんに姫野くんはまたも頬を膨らませる。
本当に清水くんは優しい。こうやっていつも、いつも、気を遣ってくれる。僕が台無しにしても、また積み直してくれるんだ。
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