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揺れる11

背後から松村くんの声が聞こえた。 振り返ると僕と颯太に駆け寄る松村くんが視界に入る。それからその後ろに追いかける清水くん。 松村くんが僕らに声をかけたあとは、諦めたように息を吐いていた。 清水くんには申し訳ないけれど、松村くんの行動はありがたい。 「どうしたの?」 「そこにスライダーあんだよ! 乗ろうぜ!」 颯太の問いかけに、松村くんはビシッと一方向を指差した。 確かに大きなスライダーが見える。特に気にはしてなかったから、視界にはっきり入れるのは今が初めてだ。 「どうせなら全員でって思って、探しにきた!」 「ああ、そうなんだね。亜樹、やりたい?」 「うん。やってみたい」 松村くん、清水くんに続いて残る二人も追いついてきた。やはり凛くんと轟くんの姿は見えない。 そろそろ話が終わる頃だろうか。結構な時間は経っているし、きっと平気だろう。もしだめそうなら、姿が見えた時点でわかるから止めればいい。 「あとは轟と小室だな! うっし、探すぞー!」 「蓮くん、一緒に乗ろうね!」 「一人で乗れよ」 「えー!」 皆それぞれ自由な集団だ。松村くんを先頭に固まって歩き出す。 「じゃあ俺は亜樹先輩と……」 「亜樹、行こっか〜」 「あ、うん」 近づいてきた仁くんを押しのけ、颯太は僕の肩に手を添える。そして集団の跡につく。 颯太の心遣いに気持ちが少し回復する。 本音を零してしまったけれど、こうしてうまく回る。本音を口に出すことは、きっと怖くないことなのだ。 凛くんもこうなっているといいな。 空を見上げると、太陽が眩しく照っていた。

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