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透明の恋慕1
○ ● ○
「……たかちゃん、ちょっといい?」
自分の中の勇気を総動員して、声を発した。
間宮くんが、亜樹くんを好きな後輩くんと消えた後だった。
「ん? いいけど」
たかちゃんはいつも通りに返事をしてきた。その返事にすら心臓の鼓動は早まる。
これから言わなければならない。その事実が頭を埋め尽くしていく。
亜樹くんは素直に話してみるのがいいと言っていたが、引かれないのだろうか。
おれ的には、今のおれは気持ち悪いけど。
「じゃあ……こっちきて」
でも何か行動を起こさなければ現状は変わらない。だから、頑張る。
たかちゃんは不思議そうにしつつおれについてきてくれた。
おれはたかちゃんの一歩前を歩きながらちょうどいいところを探す。
うるさすぎず、静かすぎないところがいい。
あたりを見回すと、一つのプールが視界に入った。
人々の多くは流れるプールや滝があるプールなど、バラエティー性のあるプールに集まっている。
そんな中でおれの視界に入ったのは普通のプールだ。レーンも何もない真っさらな長方形のプール。
「ここでいいや〜……」
普段のような口調を心がけてプールサイドに腰掛ける。脚だけを浸ける。
熱に晒された体は素直に喜んだ。
「なんだよ。普通にプール浸かんのかよ」
「うん〜」
たかちゃんは少し眉間にしわを寄せておれの隣に腰掛けた。
その様子も、かっこよかった。
本心を告げなければならないのと、彼氏のかっこよさと。
二重の意味でおれの心臓は高鳴る。
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