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透明の恋慕3
自分の変化に戸惑って、おれは当たり前のことが見えていなかったのかもしれない。でもたかちゃんが気づかせてくれたから、もう平気だ。
「初めてシた日、あるじゃん」
「……おう」
「その日からたかちゃんがかっこいいんだよね」
簡潔にまとめた一言を放つ。返事は返ってこない。
試しに隣を見ると、たかちゃんもこちらを見ていた。目を丸くして、瞬きを繰り返している。
その様子は可愛いし、かっこいい。
「……は?」
暫く経って返ってきたのはそんな言葉だけだ。
「ん〜、たかちゃんが何してもかっこよく見えて、照れちゃって、前みたいな感覚が思い出せない」
「……いや、待て。え? は? それで避けてたっての?」
「うん。だって気持ち悪くない?」
「凛が?」
「うん」
おれが頷けばたかちゃんは頭を抱えた。そして大きく、それはもう大きく、溜め息を吐く。
「恋人にかっこいいって思われて、引くやつなんているかよ……」
「え、じゃあ平気なの。今のおれ、でも……?」
「当たり前だろ」
思わず昔のように顔を覗き込もうとする。しかし膝に顔を埋められて見ることはできなかった。だがたかちゃんの耳が赤いことはわかる。
その様子でとても安心する。おれの懸念はすっかり消え去った。
そしたら急に愛しい気持ちがこみ上げて、抱きついてみたいなって、思った。
前はよくやっていたもの。今は少し難しいもの。
でも、今なら。
そろそろ腕を伸ばして、たかちゃんに触れる。そして体重を預けた。
抱きつくというより、全身でもたれかかる感じかもしれない。
「……ありがとう、たかちゃん」
「……っ、お前なぁ」
熱が心地いい。薄ぼんやりと考えていたら、おれの体がどけられる。
気づいた時には顎を掴まれ、たかちゃんと視線が絡んでいた。
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