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透明の恋慕4

「今の状況でこれは……」 たかちゃんの言葉は、途中で止まる。 無理もない。だっておれの顔が、見る見る赤く染まっているのだから。 自分でもわかる。たかちゃんと目が合って、かっこよくて、顔が近くて恥ずかしくて、おれの熱は、あっという間に。 染まる様子を見つめられていると考えたらますます恥ずかしい。知らぬ間に瞳が潤む。 「や、やだ。離して……」 「なるほどな」 たかちゃんの腕に手を添えてどかそうとしても、ピクリともしなかった。せめて顔をそらそうと試みるが、それすら叶わない。 そして呟かれた静かな言葉に、おれの心臓は脈打つ。 「な、なるほどってなに……」 「いや、間宮が渡来をいじめたくなる気持ちがわかるなって」 「最悪」 「うわっ!」 調子に乗ったたかちゃんに足で水をかけてやった。ちょうど目に入ったので手が外れる。 その隙に立ち上がって腕を組む。 「おれは亜樹くんみたいに行かないよ」 「さっきまで殊勝な様子だったくせに」 「そんなのガラじゃない〜」 「ちくしょう」 たかちゃんに向かっていーっと歯を見せると、たかちゃんは睨んできた。 引かれないとわかったからか、少し以前を思い出せた気がする。うん、こんな感じでいいんだ。 たかちゃんはいつでもおれを包んでくれて、守ってくれる優しい幼馴染。そして今はおれの大切な彼氏。 だからどちらの態度も捨てなくていい。 「おーい! 小室!轟!」 「あれ? 松村くんだ〜」 「みんなついてくんな」 走り寄ってきた松村くんが見える。 おれとたかちゃんはみんなの輪に合流した。

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