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透明の恋慕7

目の前には階段が広がっている。その先にウォータースライダー。 「うぉっし! まずはこれだ!」 松村くんが叫んで階段を駆け上っていく。 彼の言葉を聞いて視線を巡らせてみると、どうやら何種類かのスライダーがあるらしい。 全部やってみたい。 松村くんに続いて全員が上がっていく。 階段の量は結構なもので、頂上に辿り着いた時には少し息が荒くなるほどだった。 下にいた時とは違い、目の前には空が広がる。 柵を越え下を覗き込んでみると、人々やプールが小さく見えた。 「二人乗りと一人乗りがあるみたいだ!」 係員に何か聞きに行っていた松村くんが戻ってくる。 確かに浮き輪も二種類あった。 「蓮くんはボクと行こ!」 「うおっ、引っ張んなよ」 姫野くんがニコニコしながら係員のところまで行く。清水くんは少し嫌そうな顔だけど、一緒に乗ることを拒否してはいなかった。 雰囲気を壊さないためなのか、この短い間に印象が変わったのか。どちらもなのかもしれない。 「じゃあ俺たちも行くか」 「おっけ〜」 凛くんと轟くんが二人の後に続いた。 凛くんが前に乗った状態で浮き輪が滑り出ていく。 「仁! どちらが早く滑れるか勝負するか!」 「それ判定どうするんですか」 「あーそれもそうか! じゃあ行くぞ!」 「は!?」 松村くんが仁くんの腕を引いて係員のもとまで行った。仁くんの顔が困惑に染まる。 「なんで男と乗らなきゃなんですか。亜樹先輩以外嫌なんですけど」 「いーじゃねーか!」 「ちょっとキャプテン!」 勝負せずとも一人ずつ乗ればいいのではないだろうか。それが思いつかないのかどうかはわからないが、松村くんと仁くんは一つの浮き輪に収まる。 そして前二組と同じように、係員に押されて浮き輪が滑って行った。 「俺らも行こっか」 「うん」 取り残された僕らもスライダーの入り口へ行く。 軽い説明のあと浮き輪を渡され、僕が前、颯太が後ろに乗った。 まずはトンネル状のゾーンらしく、前方は青い筒しか見えなかった。先がわからなくて、緊張以上にわくわくする。 「では押しますよ〜」 「はーい」 係員の声に颯太が返事をする。 そして浮き輪が滑りだした。

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