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Rainy magic 1

カッと光が瞬いて、そのすぐ後に大音量が廊下に響く。 「結構近かったね〜」 「帰るの大変そうだ」 「じゃあ颯太の家?」 「うん、そうしよう」 移動教室の帰り道。僕と颯太は並んで廊下を歩いていた。 今日は全国的に大雨の日らしく、窓の外は無数の雫が落ちてきていた。ザーザーという音もかなり大きい。 帰るまでに絶対にびしょ濡れになってしまう。嫌な天気だ。 「亜樹は雷怖くないんだもんなぁ……」 「え? うん」 「惜しいよなぁ」 「どうして?」 颯太が悩ましげな声を出すから仕方なく返事をしてあげる。だがこの後に続く言葉はどうせろくなものではない。 まあ、こういう様子も可愛いと思ってしまうのだけれど。 「だって彼女が雷を怖がるって定番だから。優しく抱きしめて慰めてあげる。それができないんだよ?」 「仕方ないよ。怖くないものは怖くないもん」 「わかってるけどさ〜」 颯太が項垂れる。僕は苦笑する。 その間にも窓の外は閃光が走り、大きな音が鳴っている。 確か凛くんは雷を怖がるタイプだった。今日も教室で轟くんのところへ逃げていたっけ。 轟くんからしたらラッキーなのかも。それこそ颯太が望むような展開だ。 それ以外に身近な人物で雷を怖がる人はいないと思う。姫野くんはわざと怯えて清水くんにくっついていたけど。 歩き続けていると、視界に見慣れたプレートが目に入った。生徒会室だ。 柊先輩が卒業してから全く行くことはなくなった。 「柊先輩、元気かなぁ」 「急にどうしたの?」 「いや、生徒会室が」 「あー……」 颯太も僕と同じように生徒会室を眺める。すぐに廊下を曲がることになったから視界からは早々に消えた。 そのすぐあとに階段を下り始める。 「そういえば、柊は雷苦手だったよ」 「えっ。意外」 「理由は知らないし、本人から直接聞いたわけでもないけど、様子見る限りそうだと思うんだよね」 「そうなんだ……。今日、大丈夫なのかな」 「まあ、村本さんがいるし」 「うん……」 もう七月だから向こうに生活には慣れた頃だろうか。でも、少し心配になってしまう。 窓の向こうの空はどんよりと雲が覆っていた。

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