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Rainy magic 4

「お前、雷苦手か」 「そんなことはない」 「でも顔色悪いぞ」 「悪くない」 首を振ると誠也が笑った。そして僕の隣に座ってくる。 「そんな顔して何言ってんだよ」 誠也はいつものように僕が強がっていると思っているのだろう。それで相変わらずだなと面白がっている。 確かにそれは事実だ。 誠也は僕の肩に手をかけ自分の方に引き寄せる。僕の頭を誠也の方に無理やり置かせた。 硬く逞しい感触が伝わってきた。 「そういや録画忘れてるやつあったかもしんねぇんだわ」 思い出したように誠也がリモコンに手を伸ばす。体勢は変えない。 どれもいつも通りだ。からかいつつ、優しくしてくれる。何でもないように傍にいて、僕が落ち着くのを待ってくれる。 いつも通りの、はずなのに。 「離せ」 「うぉっ」 僕は誠也の腕を振り払って立ち上がった。 最低だ。可愛くない。みっともない。 ぐるぐる様々な感情が渦巻く。 だが誠也に優しくされた途端、情けなく思えてしまったのだ。自分がどうしようもなく惨めで、情けなく。 それで気づけば酷い行動を取ってしまった。 「今日はご機嫌斜めじゃん、餓鬼」 「……っ」 それでも誠也は笑ったままそんなことを言ってくる。怒る気配はない。 前までなら少しくらい苛立っていてもおかしくないのに。 誠也は大人だ。今までも大人だったのに、最近はもっともっと大人になっている。僕から遠ざかっている。 それなのに、僕は。 「煩い」 かろうじてその一言を呟き、自室に早足で引っ込んだ。 真っ暗な部屋を突っ切り、ベッドに潜り込む。 最低だ、何もかも。 全部、雷のせいだ。

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