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Deviation 1
大教室の最前列で溜め息をつく。講義開始前だから大した問題はない。
誠也のこと。
僕はどうすればよいのだろう。
今の不安定な僕では、誠也に迷惑をかけることしかできない。誠也は僕の機嫌が悪いと言っていたし、自分の行動を思い返してみても、取り繕えていないのは明白だ。
だがそうは言っても誠也と顔を合わせる以外に道はない。誠也が残業でもない限りは。
「おーはよ! 柊くん」
「……お前は」
急に肩を叩かれて振り返る。そこには菊田啓二がいた。笑顔で当たり前のように僕の隣に座る。
「お前じゃないって。きーくーた」
「……なぜ僕につきまとう」
「ストーカーみたいに言うなよ」
「僕にはそう見えるが」
「えー……」
隣のやつは背もたれに背を預けて天を仰ぐ。そのまましかめっ面で唸り始めた。
このようにいちいち動作が大げさな人間とは好んで関わることはなかった。上辺の付き合いだけで済ませてきたから、いまいち対処法がわからない。
「じゃあ柊って呼んでいい?」
「……は?」
「うわ、怖いから」
脳内でどう繋がっているのかは知らないが、謎の思考回路に思わず隣を睨む。
「いやー友達になるにはもっと距離を縮めればいいんじゃねって。ストーカーから昇格しないと」
「……物好きめ」
「いやいや〜照れるなぁ〜」
「……」
馬鹿なのか、キャラなのか。恐らく半分半分なのだろうが、とにかくこういう軽いノリの人間は嫌いだ。
自分のペースを振り乱されると苛々する。
ただでさえ今は悩みが多いというのに。
もう返事を返すまいと決めた時にちょうど教授が姿を見せる。
僕も隣のやつもそれからは講義に集中した。
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