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Deviation 3

「はーい。ちょっと早いですが、今日はこれで終わります」 のびのびと先生が言ってプロジェクターの電源を落とす。スクリーンが消え、同時に生徒の声が上がりだした。 「うぃ〜。終わった、終わった!」 隣の啓二からも同じようにくたびれた声が聞こえる。腕を真上にあげ、伸びをしていた。 僕は質問がないか今一度確認してから教材を片付ける。 「よーし、柊。学食行こうぜ」 「ああ」 伸びをしていたくせに僕よりも早く片付け終えた啓二が笑顔で言ってくる。素直に頷き、連れ立って教室を出た。 廊下を歩くと隣の茶髪がふわふわ揺れる。 「どこ行く?」 「一番近くでいい」 「だよなぁ。俺も近くでいいんだわ」 いくつかある学食の一つに向かう。 そこは自分で好きなおかずを取って行くスタイルの学食だ。僕は大抵そこで食べる。 いつもは一人で歩く道を今日の僕は二人で歩く。非常に違和感のある状態のはずだが、そこまで疑問を感じない。それが不思議だった。 「腹減った〜」 呟く啓二に一瞥をくれる。そこでふと気づいた。こいつは意外に背が高い。おそらく誠也と同じくらいだ。 だから僕は違和感を抱かないのか。 ここまで誠也に溺れてしまっている僕。だが今の状況。 思い出して気分は少し沈む。 その時ちょうど学食につく。昼休み前に講義が終わったので人の列はまだ長くなかった。 今はキャンパスにいるのだ。家でのことは気にしないよう努めよう。

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