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Deviation 5
三限は一般教養で四限は専門。啓二は当然のごとく僕を見つけて隣に座ってきた。そして二人で講義を受け、四時過ぎに終わった。
「おうしっ! 行くぞ!」
啓二は逃さんとばかりに僕の腕を掴み引っ張り出した。
やはり啓二は僕が今まで付き合ってきた人間と全く異なる人物だ。それに改めて気づかされる。だが偏見を取り払えば、嫌な気がするわけではない。
「どこに行くんだ?」
「お前が知らないようなとこ。てか遊びとかしてきてなさそうだし、色々連れてってやるよ」
講義棟を出たあたりでやっと啓二は腕を離した。それから普通に歩き出す。
啓二は僕に向き、歯を見せて笑う。
様子を見る限り、僕と出かけたかったのは事実みたいだ。本当にもの好きなやつだ。なぜわざわざ僕に話しかけようと思ったのかわからない。
「柊は歩き?」
「ああ」
「よし。じゃあ電車使えるな」
それからは啓二に色々な場所に連れて行かれた。
おそらく大学生が友人と遊びに来る一般的な場所なのだろう。
適当なビルに入って中の店を見たり、ゲームセンターに入ったり。僕には初めてのことばかりだった。だが楽しくないわけではなかった。
遊んでいるうちに時間が過ぎたので夕飯も外で取った。
「遊んだなぁ」
夜空に輝く星を見上げながら啓二が伸びをする。その顔には笑顔が滲んでいた。啓二はどうやら楽しんだらしい。
僕の体は少しくたびれている。僕も僕で時間を忘れていたかもしれない。
逃避のために誘いに乗ったが、それ以上の恩恵があったということか。
「とりあえず今日は帰るか」
「そうだな」
夜道を二人で辿る。
お互い疲れているのか、言葉はなかった。だがそれでも気まずくはない。
一歩、一歩。
踏み出す足が小さく音を立てる。
「……どうして、僕に話しかけたんだ」
ポツリと呟いていた。
互いの顔が見えにくいからかもしれない。こいつにならこういうことを聞いて平気だと思えたからかもしれない。
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