705 / 961

Crush crush 10

「お前、今他のやつのこと考えただろ」 「……は?」 「他の男のこと」 僕を睨みつける誠也。 僕は思わず小さく吹き出してしまった。 なぜ今だけ鋭いのだろう。人の心の動きはわからないとよく言うというのに。 だが笑うと当然誠也の顔は険しくなる。 「図星なのかよ」 「ああ。考えた。あの友人の言葉を」 「言葉?」 「僕といるだけで楽しいと思う人間がいると言っていた」 怒ったり、不思議そうにしたり、誠也の表情の変化がおかしい。なぜか笑みが止まらない。 隠そうとも思えず、素直に笑顔を見せる。 「僕は誠也といるだけで幸せだ。その逆もあるだろうかと、思った」 「……柊……」 羞恥が湧いてこない。今は心が本当に素直だった。すらすら出てくる言葉たちに、不快感はない。 「愛しているという感情は、こういうものなのかもしれない」 僕には縁がないと思っていたもの。きっとどこかで欲していたもの。 自然と伏せていた瞼を持ち上げ、誠也を見る。 「不意打ちとかふざけんな」 欲情に濡れた瞳が僕を睨む。 次の瞬間には荒々しく唇を奪われていた。

ともだちにシェアしよう!