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Crush crush 13

小さく笑みをこぼす。 「全てを知りたい。そう思える自分が、嬉しいから」 「やけに素直だな、ほんと」 誠也の言う通りだ。僕も自分から出る言葉に驚いている。 本当のことを言って幻滅される恐怖が、誠也相手なら軽減されるのだろうか。だとしたら昨日の誠也の言葉のおかげだ。 「……じゃあ話してやるよ。まあただの不良ってだけなんだけどな」 目の前を見つめながら誠也は話し出した。その表情には羞恥や呆れも含まれる。 僕の過去と比べでもしているのだろうか。 「おれの家庭は至って普通の家庭だ。だから若気の至りって言葉が合うのかもな。単に不良に憧れて、不良になった」 誠也が不良だということは、今の髪型でも納得できる。初めて出会った日に人を殴った姿でも想像に易い。 「殴り合いは何度もしたし、徒弟関係紛いのものもあった。学校サボったりとか、煙草吸ったり、くだらねぇことをたくさんしたわ」 「……でも家族は見捨てなかったのか」 「なんでわかったんだ?」 誠也が目を大きく開いて僕を見る。 「前に僕が帰りたくないと言った時の言葉だ」 「あー……なるほどな。そうだな。両親ともに切り離すことは決してなかった。今思えばすげぇ有難いし、辛抱のいることだったと思うよ。だから大切にしたいと思えるようになった」 「いい両親だ」 「ああ。だな」 羨ましいとは思わない。僕の両親のことは既に割り切っている。だが誠也のような普通の家庭に生まれたら、どのような人生だったのかは興味がある。 僕の性格自体は家庭によって変わるかどうかはわからないが。案外そのままかもしれない。

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