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未来と夢2

教室を出て、廊下を進み、机が見える。足音に気づいた松田先生は顔を上げる。 「最後だな」 松田先生はへらりと笑って、向かいの椅子を視線で示した。無論、僕は大人しく座る。 僕の望む道。それは変わらない。 今日は、それを、伝える場。 「渡来は……っと。昨年度と志望校は変わってないもんな」 「はい」 松田先生が手元の資料をめくって僕のものを見つける。そこには志望校が書かれていた。 僕が見つけた答えが。 「うーん、いいんだよな? これで」 「はい」 「夏休みってーと、志望校によっちゃ二次試験対策も始める時期だ。それも踏まえてるんだな?」 「はい」 松田先生は資料と僕を交互に見ていた。松田先生の問いに僕は静かに頷いていた。 机に置かれた松田先生の指が曲がる。 「後悔しないよな、本当に」 「はい。しません」 「……なら、いい。渡来の未来だからな」 「……ありがとうございます」 松田先生は頼もしく笑う。 その笑顔はちりちりと僕の胸を焼く。自然と膝の上に拳ができていた。 「まあ、これから変えちゃいけないってわけでもないしよ。とりあえず今日は終わり」 「はい。ありがとうございました」 「おーう」 その場でぺこりと頭を下げ、席を立つ。 教室へ、颯太のもとへ帰るために、僕は歩き出した。

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