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未来と夢6
「颯太……」
仁くんの腕の隙間から颯太が見える。目の前の仁くんはうんざりしたように息を吐く。
颯太は歩み寄って仁くんの腕をどけた。仁くんはあまり抵抗せずにその身を引いた。
「邪魔が入っちゃったなぁ」
「諦めの悪い人間だね、後輩くんって」
「嫉妬深いのは嫌われますよ」
颯太の鋭い睨みを物ともせず、仁くんは口角を上げる。
「まあ、いいや。亜樹先輩、また今度楽しみましょう」
その視線がちらりと時計に向いてから、仁くんは僕に向かってにこりと笑う。最後の方は颯太を完全に無視していた。
そして身を翻して帰っていく。
「亜樹、大丈夫? 何かされなかった?」
仁くんの態度を颯太は気に留めず、僕の顔を覗き込む。
頭を撫で、頬を撫で、腰を撫で。
それで何か分かるわけでもないだろうに、颯太は探るように触れてくる。
「……そうた」
「わ」
僕は堪らなくなって颯太に抱きついた。ぎゅっとその腰に腕を回す。
条件反射で僕を抱きしめつつ、「どうしたの? 本当に何かされた?」と聞いてくる颯太。僕は恋人の胸の中で首を振る。
違う。違くない。違う、違う。
颯太が好きだ。一緒がいい。違くない。好き。
大好き。違う。
好き。好き。
心の中はぐちゃぐちゃで、今にも張り裂けそう。僕の弱くて小さな心では、受け止めきれないんだ。
でも、やっぱり、これが正しい。
これが、僕と颯太にとって、一番望ましい形なんだ。
「亜樹……」
「……すき、だよ」
「……。俺も。俺も好きだよ」
目の前の安楽だけ。それだけは確かだった。
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