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祭り囃子の風が吹く2

「たこ焼き一つください」 「あいよ!」 お祭りの雰囲気にぴったりの元気なおじさんがするするとたこ焼きを焼いていく。見る間に出来上がっていくそれを受け取って、たこ焼きを待つ列から外れた。 手には温かさが伝わってくる。すごく美味しそうだ。 「あっ、お金」 「亜樹が夢中になっているうちに払ったよ」 「半分払うね」 「いいって。可愛い顔見せてもらえたし」 片手でリュックに手を突っ込もうとすれば、颯太がその手を取る。 どこかいたずらっぽい笑みに僕は唇を尖らせる。 「僕も払いたいもん……」 「じゃあ次から、ね? 少しくらい俺に彼氏面させてくれたっていいでしょ?」 颯太がにこにこと僕を見る。その表情はやはり嬉しそうで不思議に思う。 でもその顔を見ていたら拒否する気も起きなかった。 こくんと小さく頷く。 「決まり」 颯太はふっと笑みをこぼすと、僕の手からたこ焼きを取った。綺麗な指で蓋を開け、一つを爪楊枝で刺す。 自分の息でそれを冷ましてから、僕に差し出してきた。 これは、そのまま食べろということだろうか。公共の場で、そんな、恋人みたいなこと? でも颯太は普通の顔をしているし、せっかく猫舌の僕を気遣ってくれたのに無視するのも申し訳ない。 幸いお祭りの賑わいの中で僕らを見る人も少ないだろう。 なるようになれと僕は爪楊枝のたこ焼きを口に入れた。 「……あっふい……」 冷ましてくれたものの熱いことには熱い。はふはふと頬張っていると、目を丸くした颯太が視界に入った。 視線だけで疑問符を送る。

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