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祭り囃子の風が吹く3

「……わざと、ではないよね、亜樹だし……」 「……?」 「いや、でも、あの……あー……」 颯太は僕の疑問に答えてくれないで、掌で顔を覆う。たこ焼きから昇る湯気がその前を通り過ぎていた。 その間に僕は口の中のものを嚥下する。 「どうしたの?」 「いや、俺は爪楊枝を渡したつもり、だったから……」 「爪楊枝……」 顔を覆ったまま颯太は言う。僕はその言葉を咀嚼する。 三秒後くらいに僕の顔に火がついた。 「えっ、えっ……そんな、僕……」 「亜樹が可愛くて死にそう」 「死なないで……! じゃなくてっ」 颯太はおかしなことを言うし、僕の羞恥は湧き出て止まらないし。 堪らなくなって颯太の腕を引いてその場から逃げ出す。 別に周りの視線は感じなかったから誰かに見られたことはないはずだ。それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。 僕の気持ちが落ち着くまでしばらく人混みの中を進んだ。 気の済んだあたりで腕を解放する。 「可愛かったね」 「……やだ」 「拗ねないでよ。ほらたこ焼き食べよう?」 颯太は僕の機嫌を伺うように頭を撫でる。気持ちいい。 それからたこ焼きを差し出される。先のはとても美味しかった。 「……食べる」 「ふふ」 今度は自分で爪楊枝を持った。颯太も二本目の爪楊枝を取ってたこ焼きを刺す。 「屋台のものって特別美味しく感じるね」 「……うん、美味しい」

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