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祭り囃子の風が吹く4

たこ焼きを食べ終えてケースを捨てて。 射的に行ってみようという話になったので、僕らは屋台を探す。 案外すぐに見つかった。 「五回までね」 屋台の人にそう言って鉄砲を渡される。なんとなく眺めて打ち方を理解する。 それから景品を見つめた。 ずらりと並んでいるものは殆どが子供向け。幼児向けアニメのキャラクターの商品とか、カードゲームのカードとか。 僕や颯太にちょうどいいものはないかと探していたら、あるものが目に入る。 「よいしょ……」 それに狙いを定めた僕は鉄砲を構えた。引き金を引くと、コルクが飛んで行った。 それはあらぬ方向へ飛んでいく。 でもまだ一回目。しかも景品は小さいから。 そう言い聞かせてもう一発。 また外れた。 横の颯太は何も言わない。僕がやりたいと言ったからやらせてくれるつもりなのだろう。 少し寂しいとか、思ってない。 ぷるぷる首を振って打つのを再開する。 一回打って外れ、もう一回打ってすれすれのところで外れ。 「……颯太……」 結局僕は助けを求めてしまった。幾ら何でも最後の一発を託すとは、最悪だとはわかっているけれど。 罪悪感で潤む瞳で鉄砲を差し出す。 「取ってあげる」 だが颯太は嫌な顔一つせず鉄砲を受け取る。寧ろ待ってましたとばかりの表情だった。 颯太の端正な顔の横に鉄砲が構えられる。 真剣な眼差しで景品を見つめる姿は、この世の誰よりもかっこいい。 「あ、颯太、景品っ……」 パンッ。 音が耳を貫く。

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