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祭り囃子の風が吹く10
「あとは食べるだけだ〜」
「落としそうだな。気をつけろよ」
「たかちゃんもね」
おれとたかちゃんは食べたいものをひたすら買いまくった。結局両手いっぱいに食べ物を抱える結果になって、向こう見ずだったと少し後悔している。
でもこれもこれで祭りの楽しさかなって。
とりあえずどこか落ち着けるところで食べることにした。
落とさないように手元を見て歩く。
「わっ……と、ごめんなさいっ……」
視野が狭くなって、案の定誰かにぶつかってしまう。慌てて顔を上げると、見た目がいかついお兄さんだった。
「てぇーな……うわ、まじかよ」
出された言葉も怖いもの。
お兄さんの視線の先を見てみると、小さな油汚れが付いていた。先ほどぶつかった時におれがつけてしまったのだろう。
「すみません……」
「これお気に入りなんだけど。どうしてくれんの」
「あ、の、ごめんなさい……」
「謝ってばかりじゃ何も解決しないんですけど」
瞳のあたりが熱くなる。
お兄さんの睨みも言葉も声の調子も、全部怖い。悪いのはおれ。でも謝る以外にどう対処すればいいのかわからない。
「とりあえず金出せや」
「……つっ」
肩を思い切り掴まれる。力が強くて思わず呻いてしまった。
「おい」
だがその痛みからはすぐ解放される。
隣を見る。たかちゃん。たかちゃんだ。
たかちゃんはいつもからは想像もつかない険しい顔で男を睨んでいた。おれの肩にあった手を強く掴んでいる。
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