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祭り囃子の風が吹く12
○ ● ○
夜の月明かりに負けじと輝く屋台。色々な食べ物の香りが入り混じった匂い。
毎年変わらない景色と、毎年少しずつ変わる匂い。
ああ、祭りにやってきたのだと思う。
「うおっしゃー! 食うぞー!」
隣の茂は相変わらずうるさい。こいつはどこにいてもうるさい。
なんだかんだ高校入ってから毎年、茂と来ている。まあ、気を許しているのは確かかもしれない。
「最初はたこ焼き行くぞ!」
「その次焼きそばな」
「うぇい」
もはやこの年齢になると食べ物以外の屋台はあまり興味がなくなる。気が向いて射的などはやってみたりするが、やはり食うに傾くのだ。
食べ物を片手に花火が俺らの恒例行事。
神社の入り口から人混みへ参戦しようとした。
しかし、
「蓮くーん!」
「うぐっ」
聞き慣れたのが若干悔しいあいつの声と、腰にくる衝撃。危うく崩折れそうだった俺の体は、すんでのところで耐える。
鍛えておいてよかった。
「何でお前ここにいるんだ」
「え〜蓮くんがいるから?」
姫野の体を無理やり引き剥がし、じとっと睨んでみる。姫野は悪びれもせずそう言った。
俺の高校の人間は大抵この祭りには行くから、俺がいることの予想は容易いだろう。だがそこでたまたま会ってしまうのは俺の運が悪いのか、姫野の運がいいのか。
姫野の周辺を見てみる。人影はなかった。どうやら完全に一人のようだ。
彼氏たちとはこういう場所に来ないのだろうか。
それとも誘われたけど断ったとか。わざわざこのために。
自分で考えて微妙な気持ちになった。
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