730 / 961

祭り囃子の風が吹く15

「へぇ〜。噂は本当ってか。なあ?」 「確かに。前より可愛くなってるし」 「男と遊びたいから頑張ったんだね、剛太ちゃん」 「中学の頃とはえらい違いだな〜」 次から次へと男たちは言葉を吐き出していく。誰にでも威勢のいい姫野だが、今ばかりはなぜか何も言わない。そもそも怯え切ってしまっている。 確かに姫野のやっている行為はいいと思えない。しかし目の前の男らの下卑た笑みもいいと思えるはずがない。 止めようと思った俺の体は、次の言葉で止まってしまう。 「そういやあいつとはもうヤッたの? 一人だけ同じ高校行ったやつ」 「確か……松村?」 その言葉に姫野の肩はピクリと震える。 松村とは、俺の知っている松村だろうか。茂は中学が同じだったとは一言も言っていなかった。だがだとしたら姫野は反応しないのではないか。 姫野に中学時代何かがあった。だから茂は関係を隠した。そういうことなのだろうか。 しかし茂がわざわざ関係を隠さなければならない姫野の過去など思いつかない。中学が同じだったと告げても、それ以外は隠せばいいのだから。 「てか今の剛ちゃんならヤらせてくれる?」 「おれら溜まってんだよね〜!」 「剛太ちゃん一応男だから、孕まないし、頑丈そうだし?」 三人はその場でゲラゲラ笑う。 品がまるでない、最低の笑いだ。祭り会場と不釣り合いにもほどがある。 三人はそれぞれ姫野に手を伸ばした。 「やめろよ」 その手を俺は考えるより先に振り払ってしまう。 姫野が振り向く。心底驚いた顔。

ともだちにシェアしよう!