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祭り囃子の風が吹く16
「なんだよ、お前」
「あれか? 剛ちゃんのお友達?」
「ちげーって! セフレだよ、セ、フ、レ」
また三人は声を上げて笑う。
確信した。
こいつらの方が確実に気に入らない。姫野の行為も認められないが、それを百倍は上回る。
「そんなんじゃない。単にお前らの下品さが気に入らないだけだ」
冷めた表情で告げれば三人の口元がわなわなと震える。
しかしこういうやつらは相手をするだけ無駄。俺は姫野の腕を掴んで人混みに突っ込んだ。
後ろから三人の声がするが、一切を無視する。
この人混みだ。紛れてしまえば俺の勝ち。
そうして追いつけなさそうな距離になるまで進み続ける。
時々視線だけで振り向く。祭りの提灯に照らされた姫野の顔は、それでも青く見えた。いつもの調子なら、蓮くんかっこいい!ありがとう!ぐらいは言ってきそうなものだ。
あれほどの怖がりようでは、仕方ないか。
とにかく逃げるのが大事と、屋台の群れを駆け抜け、途中道から外れた。
祭りの光が遠のき、月明かりが勢力を増す一帯。藍色に包まれたその場で、やっと俺は姫野の腕を離した。
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