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空に散る色1
俺もそれにつられて空に視線を向ける。
火の玉のような丸が天に向かって昇る最中だった。それは高く上がって、弾ける。同心円状に広がった光と、遅れて届く爆音。
一瞬静まった祭り会場は、次の瞬間わっと声を上げた。
もう始まっちゃった〜なんて声や、綺麗とか言った言葉が、周りのざわめきから漏れ聞こえる。
花火があることをすっかり忘れていた。
次々に上がる花火にしばし見とれ、それから隣に視線を向ける。姫野はこういった女子が喜びそうなものを好みそうだ。
すると案の定、姫野は食い入るように空を見つめている。
「姫野はこういうの好きそうだな」
予想が当たったと思い、思わず言う。姫野は滑らかに顔を向けた。
へにゃりとその表情が笑顔を形作る。
「……綺麗なものは、好きだよ」
失敗してしまった。しかも今日は二回目。
学習しない自分を殴りたくなる。
そんな俺を責めるように花火が弾ける音が耳を貫く。嘆いていても始まらないと、俺は一つ息を吐いた。
「夢中になって落とすなよ」
そしてにやりと姫野に笑いかける。
姫野は俺の視線の先、自分の手元を見て、ハッとする。それから唇を尖らせた。
「二回目はないもん!」
「どうだか」
「でも落としても蓮くんが買ってくれればいいよ〜」
「やなこった」
腕に抱きつこうとする姫野。
それから逃げる俺。
そんな俺と姫野を花火の光が包んだ。
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