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空に散る色2

○ ● ○ 「うおー、すごい〜。わー、また〜!」 「少しは静かに見られないのかよ」 隣に座る凛が夜空をあちこち指差し、花火が上がるたびに嬉しそうに声をあげる。 「はっへひへいはもん〜」 「はいはい。綺麗なのはわかったから、口の中飲み込め」 花火が上がれば声を上げ、隙あらば口に食べ物を含み。花火が始まってからずっとこうだから、買い漁った屋台の食べ物は大分少なくなった。 「たかちゃんも少しは興奮しなよ〜」 隣の凛はへらりとおれに笑いかけてくる。先ほどの怯えた表情などすっかり消え去っていた。 怖がっておれに縋り付く凛。 美味しそうにものを頬張る凛。 綺麗な花火に瞳を輝かせる凛。 こうしておれに微笑む凛。 興奮しないわけがない。 ……凛とは違う意味で。 「あっ……ハート形だー」 凛はおれの返答を待たずにまた顔を空へ向ける。 流石に外でさかるほど阿呆でも、忍耐がないわけでもない。ただ凛を愛しく思う気持ちは、日に日に増している気がする。 「……凛」 「なに、たかちゃ……んぅ」 幸いひと気のない場所だ。 おれは凛の手に自分のものを重ね、荒々しく唇を奪った。くちゅくちゅと舌が触れ合う。

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