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空に散る色4
○ ● ○
「ここら辺かな」
亜樹の手を取って斜面を登らせて上げる。亜樹は小さく声を上げながら俺の隣に並んだ。
亜樹の食べたいもの、やりたいこと、全てやり尽くして、花火を見るために森に入った。俺が事前に調べておいた穴場スポット。ひと気がなく、視界が開けている。
「すごい……ここならよく見えそうだね」
「でしょ」
隣の亜樹は俺を見てにこにこと笑う。とても可愛い。
今日一日、ずっとこうやって笑ってくれた。心から楽しんでいるみたいで、安心した面もある。
「……亜樹」
「わっ……」
愛しい人から視線を空へ向けると、白い光が真っ直ぐ天へ昇っていく。亜樹に教えると同時に、空で花が開いた。
それを皮切りに様々な花火が空へ上がる。
青や赤、緑や橙。カラフルな光が空で弾けては消えていく。美しさと儚さを孕む色は、だからこそ綺麗であった。
隣に亜樹がいるから、なおさら。
「綺麗だね」
「うん、すごく……!」
亜樹の瞳は様々な色を反射して輝く。美しい空をいっときも見逃すまいと、懸命に凝視していた。
可愛い。
俺は亜樹の手に指を絡めて、恋人繋ぎにした。
亜樹の掌は温かい。
「俺、嬉しいよ」
「ん……?」
「離れちゃうと思ってたから」
決して下に見ているというわけではないが、亜樹が俺と同じ大学を目指していない、目指せないのは薄々だけどわかっていた。
だけど近くに俺の目指す大学以外で亜樹の学力に近いものはない。
だからこそ高校卒業後に離れる。
それが未来だと思っていた。それでも心は一緒だ。だから耐えられる。
しかし実際に一緒に居られることに、勝るわけはなく。
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