742 / 961
綻び4
スマホが震えて、メッセージが来たことを告げる。画面を見ると颯太からだった。デートのお誘い。
じっと見つめていると画面は暗くなる。
柊先輩に会ってから数日。ずっと考えていた。
答えは僕の中にある。ならば今取ろうとしている選択が正しいのだろうか。けれど飲み物との関連がわからない。そもそも柊先輩の考える答えはそうでない気もする。
だが柊先輩の口ぶりからして人に答えを求めてはいけないのだ。自分で出さなければならない。
でも、なら、何が。
堂々巡りの思考を続け、悩み続け、結局答えは出ないまま。
こんな気分で颯太に会ってもきっと心配をかけてしまう。今までだってきちんと演技できていたか定かではないのだから。
そう思ってスマホを開く。手早く断りの返事を書いた。
すると理由を送る間も無く返信がくる。風邪かどうか心配していた。
特に理由が思いつかず、ちょっと都合が悪いだけと送っておいた。それから心配してくれてありがとうとも。
それに読んだことを知らせるマークがつく。返信は来ないので会話は終わったみたいだ。よかった。
だが問題はこれからだ。夏休み中ずっと断るわけにもいかない。
自分の中のもやもやを早く消さないと。
しかし考えれば考えるほど泥沼に向かっていく。だからとりあえず勉強でもしようと立ち上がった。
同時に、人の来訪を告げる音。
ともだちにシェアしよう!