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崩れゆく2

『……亜樹、今、大丈夫?』 電話越しの声は、いつもより少し遠くて、少し濁っていて、少し、低い。 「……うん……」 だけど僕の声の方が、よっぽど濁っていた。 遠い遠い颯太よりも、ずっと。 『今日は少し話したいことがあったから、電話したんだ』 「うん……」 颯太はいつだって気遣いに満ちていて、今だって、今から吐く言葉だって、きっとそうなんだろう。 だけど不安は僕を内側から焦がしていく。 漏れる息が僕の耳に突き刺さった。 『一旦俺たち……』 ゆっくり、静かに、颯太が言葉を発する。 緊張で息が止まる。 真っ暗い部屋の一点を見つめた。視界に何か映るわけでもないのに。 『別れよう』 詰めた息が一気に吐き出される。過呼吸の時のような嫌な吐き出し方だった。 だが放たれた言葉の衝撃が、そんなもの些細なこととしてしまう。だって颯太は今、なんて。 視界が回る。ぐるぐる回る。 どういうこと。なんで。どうして。 困惑する僕の言葉を待たず、颯太は語り出した。

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