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崩れゆく5
「じゃあ俺はどうしたらいいの!」
その拳は強く握られて、小さく震えている。
「亜樹の悩みをわかってやれない!亜樹に辛い顔をさせてばかり!ずっと!ずっとだよ!そんな自分が情けないし、嫌いだし、だけど解決方法はわかんないんだ!」
「……颯太……」
叫ぶ颯太を見るのは初めてだった。今まで溜めてきたものを全て吐き出すような、そんな悲痛な声だった。
大人に見える颯太も、まだまだ青年で、子供なんだ。
「このまま付き合い続けても、俺らに前進ってあるの!?」
颯太の視線が僕に刺さって、ぐっと息がつまる。捕らえられた瞳は揺れて、さらに涙が溢れ出す。
前進。
確かに、ないのかもしれない。
このままじゃお互いが、お互いのことを、考えて、悩んで、それで、
唇を噛んで逸らしかけた視線。その隅で何かがよぎる。
気になって向けた先には、二つの袋があった。キッチンに置かれたままの、ココアとコーヒーの粉。ココアの方は、僕のために颯太が常備してくれている。コーヒーは颯太のもの。
"飲み物を見てみろ"
ふと柊先輩の言葉が思い出される。
「……そっか。そんなこと、だったんだ」
僕はとすっと颯太の胸に落ちた。
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