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フリージアのあわ5
トイレの個室に座り、ぼーっと上を向く。
茂は、空気は読めるやつだ。そんなあいつに指摘されてしまうとは、なんてかっこ悪いのだろう。
姫野に直接聞くのはなぜ嫌なのか。それは姫野とそこまで深く付き合うつもりがないからだ。
そもそもあんなストーカー放っておけばいいんだ。
なんて考えても気になってしまう。
だけど聞くのは躊躇う。
「……ああ、怖いのか。俺」
言葉にしてみる。妙にしっくりと馴染んだ。
俺は恐れている。
この関係の発展か。崩壊か。吐き出させることに対してか。
理由は自分でさえわからない。けれどきっと恐怖を抱いているんだ。
別にただの過去だ。人の過去。
姫野は忘れてと言った、過去。
俺の心を捕らえて離さない、過去。
腕を真上に上げて伸びをする。次に思い切り脱力してみた。
長く長く息を吐きながら、目を閉じる。
最後に小さく「よし」と呟いて、俺はトイレから出た。
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