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読めぬ心と体育祭2

スタート位置あたりがよく見える場所に立つ。渡来は一番最初のレースだったはずだ。 姿を探すとスタートライン近くで不安そうにする渡来が見つかった。 またクラスに迷惑かけないかとか、転けたらどうしようとか、詮無いことを考えているのだろう。 本当に健気で可愛いやつだ。守ってやりたくなる。でも守るのは、間宮の役目。 「清水くん」 「ああ、間宮」 「亜樹の観察しにきたの?」 「嫌な言い方すんなよ。応援だわ」 俺のツッコミに間宮はにこりと笑う。 渡来の笑顔を思い浮かべて、並べてみる。 うん、お似合いだ。 渡来と間宮は本当に似合いのカップルだ。 対になることが必然であるかのような、並んだら一つな絵画のような、そんな二人。 俺はそう思う。 「可愛いよね、亜樹」 「なんだいきなり。また惚気か?」 「清水くんだってそう思うでしょ?」 「……まあ、可愛いよな」 二人してスタートラインの渡来を見ながら、会話する。間宮の問いかけを否定する気は起きないから、素直に言ってみる。 渡来が可愛いのは事実だ。あいつと違って演技したようなところもない。自然に笑って、自然に泣いて。飾らない健気な、可愛いやつ。 「ちょっと、俺以外可愛いって言っちゃダメなんだけど」 「おい、お前が言わせたんだろ!」 だが素直に言ってやれば、ジト目で睨む間宮。間宮は人のことをからかうのが好きなやつだ。渡来のこともよくからかうし。 本当に調子が狂う。 「あっ、始まる」 「……おう」 間宮から渡来へ。応援に心を傾けた。

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