767 / 961
読めぬ心と体育祭2
スタート位置あたりがよく見える場所に立つ。渡来は一番最初のレースだったはずだ。
姿を探すとスタートライン近くで不安そうにする渡来が見つかった。
またクラスに迷惑かけないかとか、転けたらどうしようとか、詮無いことを考えているのだろう。
本当に健気で可愛いやつだ。守ってやりたくなる。でも守るのは、間宮の役目。
「清水くん」
「ああ、間宮」
「亜樹の観察しにきたの?」
「嫌な言い方すんなよ。応援だわ」
俺のツッコミに間宮はにこりと笑う。
渡来の笑顔を思い浮かべて、並べてみる。
うん、お似合いだ。
渡来と間宮は本当に似合いのカップルだ。
対になることが必然であるかのような、並んだら一つな絵画のような、そんな二人。
俺はそう思う。
「可愛いよね、亜樹」
「なんだいきなり。また惚気か?」
「清水くんだってそう思うでしょ?」
「……まあ、可愛いよな」
二人してスタートラインの渡来を見ながら、会話する。間宮の問いかけを否定する気は起きないから、素直に言ってみる。
渡来が可愛いのは事実だ。あいつと違って演技したようなところもない。自然に笑って、自然に泣いて。飾らない健気な、可愛いやつ。
「ちょっと、俺以外可愛いって言っちゃダメなんだけど」
「おい、お前が言わせたんだろ!」
だが素直に言ってやれば、ジト目で睨む間宮。間宮は人のことをからかうのが好きなやつだ。渡来のこともよくからかうし。
本当に調子が狂う。
「あっ、始まる」
「……おう」
間宮から渡来へ。応援に心を傾けた。
ともだちにシェアしよう!