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読めぬ心と体育祭3
パンッと銃から音が鳴って、渡来含め競技者が走り出した。
スプーンレースはその名の通りスプーンにピンポン球を乗せて走る競技だ。一周四百メートルを走る。いかに落とさないかが勝利の鍵だろう。
渡来は手元のスプーンを見つめながら走っている。走るというよりは早歩きに近いかもしれない。
ぽてぽてと懸命に歩いている。バランス感覚があるのか落とす気配はなかった。
ただ周りの人より進むスピードは遅い。今の所最下位だ。
もしこれがあいつだったら向こう見ずに走って、落として、抜かされて、なんてやりそうだ。
競技中に転けるのもあり得そう。
想像してくすりと笑う。
それで微妙な順位か最下位になって、弁明をしてくるとか。それで俺はこれで総合一位ないなとか言ってやるんだ。
「亜樹ー!ファイト!」
隣の間宮が大声を出す。はたとレースに気を向ければ、渡来はなんと一位になっていた。
どうやら他の選手は途中で落として減速したらしい。だが渡来は堅実に落とさず進んだ。
「渡来ー!行けー!」
俺も大声を出す。
体育祭ではこうやって予測のつかないことが起こるから面白い。
そのままレースは進み、渡来はゴールテープを切った。
ゴールして一位の紙を渡されながら、驚いた顔をしている。自分を自分で信じられないのだろう。
その場で呆けている。
「清水くんはさ、亜樹と姫野くんどっちが好きなの?」
「……は?」
間宮の質問に心臓が掴まれる。鼓動が早まっていく。
素直に渡来のところへ行ってやればいいものを、何のつもりなのか。
「なんでそんなこと?てか今聞く必要あるか?」
「えー、だって気になったから」
間宮はあくまで視線は渡来に向けたまま。そして綺麗に微笑んでいる。
間宮の真意を探ろうと口を開きかける。
「颯太!颯太!一位だった!」
だがその前に興奮を露わにした渡来が、間宮のところへやってきた。
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