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読めぬ心と体育祭7

「疲れたよ〜たかちゃん〜」 「そんな距離走ってねーだろ」 「なぁ!見たか、オレの走り!」 「ちゃんと見てたよ」 競技を終えて帰ってきた小室や茂が喋っている。小室は轟にだらーともたれかかっており、茂はいつものように変なポーズを決めながら叫んでいる。それに渡来が笑顔で返してやっていた。 結局茂たちは三位だった。ちょうど真ん中だ。まあまあいい順位だろう。 「なぁ!蓮も見てたろ!」 「見てたし、応援もしたわ。つーか俺次だから」 「おうよ!」 パン食い競争は次だ。しかしその前にトイレに行きたい。 校庭に設置されているものより校舎内の方が綺麗だ。一旦玄関に向かう。 今いたグラウンドはまだムカデ競争が行われている。そこからスプーンレースが行われていた方のグラウンドに向かう。 応援に励む者、クラス別の待機席で喋る者、移動している者。色々な生徒たちが作る人混みを抜け、玄関前にたどり着く。 そこでふとグラウンドに視線を向けた。ある一点に吸い寄せられる。 どうやら障害物競走が始まるようで、スタートラインには姫野がいたのだ。あの約束以降、会っていなかったから知らなかった。 「姫ー!頑張れー!」 「姫ちゃん!見てるぜ!」 「うんっ!ありがとう!」 応援スペース最前列を、姫野の彼氏たちが陣取り、大声を出していた。それら一つ一つに姫野は笑顔で答えている。 相変わらずの様子に呆れと苛立ちが立ち上る。 無論姫野はこちらには気づかない。俺は口元をひき結んで、グラウンドを見つめた。 程なくしてレース開始の合図が鳴った。 姫野含め五人が走り出した。

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