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霞6
グラウンドには肩を組んだ間宮と轟がいた。身長がほぼ一緒らしく、組むことになったみたいだ。
渡来はすっかりその姿を見つめることに夢中だ。
間宮と轟以外に、三ペアがスタートラインに並ぶ。
銃声がその場に響き、一斉にスタートした。
間宮と轟はスタート早々、団体の前に出る。元の運動神経の良さもあろうし、息の合わせ方もうまいのかもしれない。
足をもつれさせることもなく、軽快に二人は進んでいった。
「なぁ、小室も渡来も嫌じゃねーの?恋人が他の男とああやってくっついてるの」
すると茂が突然不躾な質問を投下する。おとなしく応援していればいいものを。
その問いに渡来も小室も視線はグラウンドから逸らさない。
「……僕は少し、気になっちゃうかな。今は相手が轟くんだから平気なんだけど」
「ほーん」
「ん〜おれはいいかなぁ〜。たかちゃんがかっこよければなんでいい」
「へぇー。正反対の意見だな!」
グラウンドの二人はまだ順調だ。
他のペアはよろけたり、こけたりしている。
俺はそれを見つめる小室に目を向けた。
「……逆に轟がかっこ悪けりゃだめなのか?」
「え〜?ん〜そもそも好きな人は何をしててもかっこいい気がする〜恋は盲目ってやつ?」
「そういうもんか」
確かに渡来を見ていても、そういう感じがうかがえる。それは相手が完璧人間、間宮だからかもしれないが。
だが小室もそうらしいし、そういうものなのだろうか。
一区切りつけてまた視線を戻せば、二人はゴール目前だった。
特に何の波乱も起きることなく、まっすぐ走ってゴールテープを切った。
わっと声援が上がる。渡来も小室も嬉しそうに飛び跳ねたり、拍手をする。
すぐに足の紐をほどき、受け取った紙を入れ終えた間宮と轟が俺たちの方へやってきた。
「颯太、お疲れ様!」
「たかちゃん、かっこいい〜」
「圧勝だな!」
二人を囲んでわいわい言い出す三人。俺は一歩離れてその様子を眺めていた。
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