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霞7

二人三脚、大縄跳びを終えると、最後に待っているのは全員リレーだ。その名の通りクラス全員が出場するリレー。学年ごとに行う。 運動が苦手な人間にとっては地獄のような競技かもしれない。 ただそれぞれのクラスが工夫を凝らした走順にしているため、毎年そこまでの差はつかない。 俺は三番目だ。リレーは苦手というわけでもないので、特に何も感じない。一つの事実が眼前にあるくらいの認識。 一年、二年の全員リレーを渡来たちと眺め、それから三年の出番がやってくる。 それぞれのクラスが三列で走順に並んで、グラウンドに整列していく。 「渡来、大丈夫か?」 「緊張する……」 俺の問いに渡来は上ずった声で答えた。 俺の次の走者である渡来だから、隣に立っていた。体操着の上から胸元をさすっている。 運動が苦手なタイプの典型的な反応かもしれない。おそらく心臓は早鐘を打っているのだろう。 「幸い四番目だし、すぐ終わるよ」 「……うん、だよね」 「ほら、それぞれのスタート場所に行くみたいだ」 「うん、ありがとう……」 渡来は一度も俺と目を合わさず、終始ぎこちなく返事をする。それから俺の次のスタート位置に向かった。 大勢の人間がそうやってめいめいのスタート位置に行く。一人百メートルのため、計四ヶ所だ。 渡来からしたら、スタート位置がちょうどゴールの場所であることも、目立つからと苦痛なのだろう。 そんなことを思いつつ、俺はスタート位置に向かった。 すると見覚えのある姿が一人。 姫野だった。 俺と目が合うと、珍しくすぐそらした。その瞳に浮かぶのは不安と混乱、だろうか。 その様子にすぐ先の自分の態度を思い出す。どうやら姫野は軽蔑というより、自分が悪いと思っているようだ。 「姫野」 「……蓮くん、あの、さっきは……」 「悪かった」 「え……?」 きょとんと俺を見つめる姫野。

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