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霞10
「……三年十二組です!!」
うぉおっと野太い歓声が聞こえてきた。その場で立ち上がって拳を振り上げたり、拍手をしたり。そういう者もいる。
その歓声は他クラスと異なり、なかなか止まない。めいめい好き勝手に喜びを表している。
優勝クラスの特権であろう。
姫野はというと体育座りをしたままのうちの一人となっていた。遠すぎて顔は見えないが、驚きでもしているのだろうか。
まあどうせ閉会式が終わる頃には俺のところにすっ飛んでくるはずだ。
「では呼ばれたクラスの代表者は前に出てきてください……」
体育委員長はその後も言葉を続けた。
一位から三位のクラスの表彰。この後の流れ。閉会の言葉。
あっという間に閉会式の残った部分は終わり、解散となった。この後はクラスに戻ってショートをやるのみ。
グラウンドは帰る人の波で騒然となる。
「なあなあ、まっつー何かくれねーかな」
「特に俺らなんの順位もないだろ」
「でもさぁ、頑張った的な!」
「ないない。さっさと教室行け」
瞳をキラキラ輝かせる茂を押す。
松田先生は確かにイベントごとにお菓子だったりをくれるタイプだ。だが茂に期待を持たせてはならない。もし違った時哀れだ。
「蓮は?」
「ちょっと用あるから。先行ってて」
「オッケー!」
茂は親指を立てると轟や小室の方へ合流しに行った。
「蓮くん!」
タイミングを計ったかのように姫野がやってくる。その表情は綻んでいて、優勝が素直に嬉しいように見える。
「お疲れ」
「お疲れ様!ボクのクラス一位だったよ!」
「おめでと」
素直にそう言ってやれば、姫野ははにかむ。珍しい。
「じゃあ一緒に温泉行けるね!楽しみ!」
「優勝しちまったなら、仕方ねーな」
「えっへへ、いつなら空いてる?」
俺の軽口に姫野は反応しない。それくらい気分が上がっているらしい。
こちらの方がスムーズだというのに、どこか違和感がある。慣れというのは恐ろしい。
だが違和感があったとしても、誰かが喜んでいる姿に嫌な気はしない。
俺の方もいつもよりは真面目に姫野に答えていった。
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