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増加関数と方程式7

カラカラと小さく音を立てて温泉に通じる引き戸を開ける。 俺も姫野も用意されていた小さいタオルのみを持って踏み出す。 俺は無論男だから平気だが、姫野の場合少し恥ずかしがるかと思っていた。しかし姫野は何も気にすることなく入っていく。 裸を見られ慣れているのか、俺はもはやそういう相手ではないのか。どちらにせよ複雑。 「やった、誰もいないよ」 「おおー。やたら広いな」 「ね!」 姫野は俺を振り返って嬉しそうに笑う。 その表情は本物半分、作り物半分。 緊張、しているのか。 温泉に喜んでいるのもあるが、単純に緊張しているのだろう。これから話さなければならない内容に。だから気にするどころではない。 せっかくの機会なのに申し訳ない。 「早く洗って露天風呂行きたい」 「はいはい。転ぶなよ」 「子供じゃないもん!」 「どうだか」 姫野が素早く椅子に座って髪の毛を濡らしだす。それに軽口を叩けば、姫野は頬を膨らませた。 微笑みながら俺もシャワーに手を伸ばした。 軽く言い合いをしながら、俺も姫野も髪体ともに洗い終えた。 そしてタオルを手に取り、いざ露天風呂へ。 「あっ……さむ」 先だった姫野が外に出てポツリと呟く。 俺も続いたが、確かに急な外気は身に染みる。 早くお湯に浸かりたい。 その考えは当然二人とも持つわけで。 姫野はなるたけ早く向かおうとした。 「きゃっ……!」 「あぶねっ」 足を滑らせる姫野。 その腕を掴む俺。

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