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攪拌1

ふぅと自分の吐いた溜め息が耳に入る。 ふとした瞬間に「最悪だ」と呟きそうになってしまう。今の所懸命に堪えてはいるものの。 学校の廊下を歩きながらガリガリと頭を掻く。 姫野との旅行から数日経った。 あの日、あの夜。 自分のしたことは雰囲気と夜の空気にあてられたとしか思えない。少なくともそう思わなければ俺の心は羞恥で壊れる。 未だに自分のしたことが理解できない。 姫野に辛い告白をさせてしまったから、確かに罪悪感やいたたまれなさはあったのだろう。 それでも抱きしめるまでいく必要はあったのか否か。 まあ、旅行二日目に不思議と姫野は何も言ってこなかったからまだ良かったのだが。 「おっ、清水〜」 「あぁ、松田先生」 声に顔を上げると、松田先生が向かってきていた。その手には数冊の分厚い本が抱えられている。 普通に嫌な予感がした。 「その顔はさすが清水だなあ。そういうことだ」 松田先生はニッと歯を見せて、俺の手にその本を持たせた。ずしっと重量が乗っかってくる。 「図書室ですか?」 「いんや、理科資料室だ」 「……なんで?」 「部活行く前についでに〜とか言われたけどめんどいし。頼むよ、委員長」 両手を軽く合わせて懇願する松田先生。その指にかかった鍵が揺れる。 ちらりと壁にかかる時計を見る。そもそも部活自体に遅れそうな時間帯であろう。 俺は今日オフだから時間は気にしない。 「わかりました。鍵ください」 「ほいよ。さんきゅな!」 渡すが早いか松田先生は廊下を走り去っていった。 「なんだかなぁ」 俺は再びため息を吐いて、本を持ち直した。

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