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愛すという行為2
緊張しつつも俺に体重を預ける姫野。俺は口を開く。
「姫野って料理する?」
「……えっ? んー……うん。人並みには?」
「じゃあ一緒に夕飯作ろうぜ」
リビングの壁にかかった時計の短針は『6』という数字を示している。
なんやかやとしているうちにもうこんな時間になってしまったみたいだ。今から料理をすれば夕飯時にはちょうどいい時刻になるだろう。
「一緒に?」
「食材ある?」
「ある、けど……」
「おし」
頭に疑問符を浮かべてばかりの姫野の手を掴む。姫野を連れてキッチンに入った。
冷蔵庫を開ける。合い挽き肉や玉ねぎ、卵など、ハンバーグの材料が揃っている。元から作るつもりだったのかもしれない。
「ハンバーグでいい? つーか使っちゃって平気?」
「あっ、うん。いいよ」
「じゃあ作るか」
「わかった」
一緒に夕飯を作るという行為の意味は、やはり姫野は理解できていないみたいだ。しかしとりあえず頷いている。
行動理由を説明しても意味ないので、俺は大人しく食材を出していった。
「玉ねぎみじん切りにしてくれるか?」
「うん」
姫野が包丁やまな板を出す横で、俺は挽き肉や卵、パン粉を混ぜ始める。
すぐにタンタンと切る音が聞こえてきた。目線を向ければ、慣れた手つきで危なげない様子の姫野。事情を知っているにもかかわらず、家庭的な一面はまだ違和感がある。
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