817 / 961

愛すという行為3

「みじん切り、うまいんだな」 「これくらい誰でもできるよ〜」 「いやいや、できねーやつもいっぱいいるって」 「え〜」 姫野はくすくす笑いながらボウルに玉ねぎを流し入れた。俺はそれも一緒に混ぜる。 程なくして粘り気が出る。 「俺は姫野の作るな」 「……じゃあボクは蓮くんの?」 「そう」 ボウルの中から半分取る。姫野もおずおずと残りを取った。 二人でお互いの分を丸めていく。 好きな人には美味しいものを食べて欲しいよなぁ、と思いながらハンバーグの形にしていく。 ちらりと姫野の方を見ると、慣れた手つきだった。しかしどこか丁寧に見えたのは、俺の自惚れではないと願いたい。 「できたよ」 「俺も」 自然と笑顔を見せる姫野に俺も微笑み返す。 そのあとは、姫野がハンバーグを焼く係、俺はソースを作る係になって、それぞれコンロの前に立つ。 なんてことはない日常。それでいて温かな光景。 そんな風に姫野が感じられるようになったらいい。 目の前のデミグラスソースを混ぜながら、ふと思った。 「……と、ケチャップは……」 ケチャップは調理場の上に乗っていた。隣では姫野がハンバーグを焼いている。 俺は姫野の背中側からケチャップに手を伸ばした。 「……んっ」 一瞬、姫野の背に俺の腕が触れる。すると漏れ聞こえる艶めかしい声。 俺は少しの間だけ体を固めてしまう。 「……いい匂い、してきたねっ」 しかし姫野が些か慌てた様子で声を出す。 「だな〜ソースももうちょいで完成」 俺もそれに合わせた口調でいく。 そうして順調に料理は進められていった。

ともだちにシェアしよう!